センセさんからの投稿
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ボクが美雪と出会ったのは大学3年の夏だった。
当時彼女は受験を控えた高校生で、家庭教師の派遣元からの紹介でボクが家庭教師を務めることになった。
夏休みを控えたある日、ボクが美雪の家へ出向いた。
高級住宅街の中でもひと際目立った大邸宅がボクの探している家だと気がついた時、愕然とした。
“どんなわがままなお嬢様がボクを待っているのだろう・・・”
来年大学受験を控えた夏になってようやく家庭教師をつけるなんて、よほど頭が悪いか勉強嫌いかに決まっている。
そんなに勉強が嫌いなら進学なんかさせなければいいのに、お金持ちと言うのはとにかく見栄を張りたがるものらしい。
ベルを鳴らすとすぐに母親が出てきて、ボクを出迎えてくれた。
「先生、お待ちしておりました」
「初めまして」
ボクは優等生らしさを強調しようと少しオーバーに頭を下げて見せた。
どこに座ったら良いのか躊躇うほど高級そうな皮張りのソファーとかが置いてあるリビングに通され、促されてようやく座ると直ぐに教え子となる女の子が二階から降りてきた。
細身でストレートな長い髪にアーモンドアイという基本エレメントは良かったが、いかにもファンキーそうで、だらしない態度をした女子高生が登場した。
お約束通りガムをくちゃくちゃ噛んでいて、挨拶もロクにできない。
それでもボクにとっては学生生活を支える貴重な収入源となるお客さまなので、ボクは小娘相手にきちんと挨拶をした。
「こんにちは。今日から数学を教えることになりました。よろしく」
女子高生はボクを値踏みするようにちょっと失礼なくらいボクをジロジロ見ると、
「美雪です」
とひと言だけ言うと、首だけでボクに会釈をした。
「こら、美雪!きちんとご挨拶なさい!」
「いえ、お母さん・・・」
ボクが母親を制すると、母親は申し訳なさそうにボクに頭を下げてくれた。
娘はともかく、親の方はきちんとしていそうだ。
「この子、やればできる子なんです」
きちんとはしているが、親馬鹿だ。
派遣元からは、とにかくどこの大学にでもいいので入れるレベルにしてさえもらえればいい、そう言われてやってきた。
美雪の部屋に入ってみると、服装ほどの乱れはなく、それなりに整理された部屋だった。
本らしきものはマンガしかなくて、あとはテレビゲームのソフトが一応片づけられている。
ボクは美雪の隣に座って教科書をカバンから取り出させた。
思った通り、教科書には書き込みも折り目もほとんどなくて綺麗なものだった。
先が思いやられる・・・。
それでも気を取り直して、教科書に載っている初歩的な練習問題を指して、
「これ、解いてみてください」
と言ってみる。
問題を解き始める気配がないので美雪の方に目を向けると、ジッとボクを見つめている。
「ん?どうかしましたか?」
そう尋ねると、美雪はおもむろに、
「ねぇセンセ、どうして私なんかに丁寧語で話すの?」
「おかしいですか?」
「おかしいよ。念を押すまでもないけど、私、年下だよ」
「美雪ちゃんは自分が年下だという自覚がありながら、どうしてボクにタメ口で話すんですか?」
美雪はニヤリとしながらも、意外な質問を受けたという顔をしながら、
「私が質問しているの。質問に質問で返すのは無しだよ」
これにはボクが苦笑いをさせられた。
頭の回転は悪くないようなので、その日初めて、ボクは美雪に好感が持てた。
「ボクなりに理由はあるんですけど、こうしませんか。美雪ちゃんが問題を一問解いて正解をしたら、ボクが美雪ちゃんの質問にひとつ答える。どうですか?」
「どんな質問でもいいの?」
「はい」
「それなら、いいよ」
美雪は涼しい顔で答えると教科書とボクを見比べて目で”どれ?”と尋ねた。
ボクがさっき言った練習問題を指すと、美雪はノートを取り出してサラサラと問題を解き始めた。
一分も経たないうちに、
「できたよ」
と言ってノートから顔を上げた。
半信半疑でノートを覗き込むと答えは合っている。
「じゃあ、これとこれ」
ちょっと悔しくて大人げないけど、授業でまだ習っていないかもしれない教科書の真ん中あたりの練習問題を指してみるとこれも直ぐにサラサラと解いて見せた。
“ウソだろ?”
信じられなかった。
ボクはムキになって、教科書の最後の方の問題を二つ選んだ。
「これとこれも解いてみて」
美雪は直ぐにノートに鉛筆を走らせると瞬く間に解いてしまった。
脱帽だった。
「美雪ちゃん、どうして・・・」
「ストップ!センセ、問題を解いたのは私だよ」
確かにそうだ。目で続きを促すと、
「五つ解いたから、五つ質問できるよね?」
と言うのでボクは頷くしかなかった。
「嘘の答えはダメだよ」
「わかってるよ」
「センセ、私を見てダメな子だと思ったでしょう?」
ボクは正直に頷いた。
「どうして丁寧語じゃなくなったの?」
“しまった!”
思わず我を忘れて普通に喋ってしまった・・・。
「多分驚いたからだと思う」
素直に告げると、美雪は満足そうに頷いて、
「あと三つはとっておくね」
と言われた。美雪は悪戯っぽい目をして、
「センセ、もっと問題出して」
と言ったが、ボクは直ぐに白旗を上げた。
勝てない勝負を続けたら、泥沼にハマる。
美雪にどんどん問題を解かれたら、ボクは何でも洗いざらい喋らされて美雪に丸裸にされてしまうと思った。
「ねぇ、どうして美雪ちゃん、勉強できないふりをしたの?」
美雪は少し悪戯っぽい笑みを浮かべると言った。
「センセ、問題解いてないけど、特別に答えてあげるね」
“これはまた、一本取られた・・・”
そう思ったのが顔に出たのか、美雪はクスリと笑うと続けた。
「私は、出来ないふりなんかしてないよ」
「えっ?」
「センセが私を見て勝手にそう思ったんだよ」
言われてみればそうだった。
確かにボクは美雪の見た目に惑わされてしまった。
「でも、どうしてそんな風に思われるような態度を取っているの?」
「センセ、もう質問の権利ないんですけどぉ」
ボクは苦笑しながら美雪にはっきりと言葉で白旗を揚げた。
「美雪ちゃん、降参だよ。だから、普通に喋ってもいいかな?」
美雪は特にボクをやり込めた風な態度は見せず、ニッコリ笑うとあっさり”いいよ”と言った。
「聞きたいことは色々あるけど、しばらくお話しする?それとも勉強を続ける?」
美雪は少し考える素振りを見せて、
「勉強する。センセはそこで好きなことしてて」
と言った。
確かに美雪には家庭教師なんか必要無さそうだった。
少なくとも数学について、ボクの出る幕はなさそうだ。
教科書の基礎問題を普通に理解し、難なく解けるなら後は自分一人で問題集の応用問題をどんどん解いていけば、自然と学力はアップする。
“事情はよく解らないけど、初日でボクはお払い箱だな”
“どうせ今日でおしまいなんだから”
そんなことを思いながら、ボクはお言葉に甘えてマンガを読ませてもらうことにした。
女の子のベッドに腰掛けるのは気が引けたので、フローリングの床に腰を下ろして読んでいると美雪は黙って部屋を出て行き、直ぐに座布団を持って戻ってきた。
「センセ、女の子のベッドにいきなり座らなかったの、偉いよ」
「そりゃ、どうも」
その日ボクは、マンガを読み続け、美雪に促されて再び彼女の隣に座らされた時、ノックの音が聞こえた。
すぐに扉が開かれて、母親がケーキと紅茶を持って入ってきた。
「どう?お勉強進んでる?」
「うん、センセ、教えるの上手だから結構進んだ」
“何を言い出すのかと思えば・・・”
驚いて声も出ないボクを尻目に、それを聞いた母親は満足そうに部屋を出て行った。
ボクはただそれを焦点の定まらない目でぼーっと見送った。
「センセ?」
美雪の声で我に返ると、
「ケーキ食べなよ」
と言って、美雪はフォークを渡してくれた。
時間はあっという間に過ぎて、”では、また来週”ということになった。
「センセ、この番号に掛けてみて」
部屋を出る前に、美雪に言われるがままに携帯から電話を掛けさせられると、美雪の携帯電話が短く鳴った。
ディスプレイに表示された番号を満足そうに見ながら、美雪は自分の携帯にボクの番号を保存した。
ボクはどうしてだか家庭教師を首にならず、それからも毎週美雪の部屋でマンガや雑誌を読むアルバイトが続いた。
夏休みの間も相変わらずだった。
美雪は自習を続け、ボクはマンガを読んで過ごしていたが、流石にこれではマズいだろうと思い、数学以外でもいいので見てあげようとしたら、逆に問題を出されてやり込められてしまった。
でも美雪にはそんなボクをバカにしている風なところは微塵もなくて、ボクが困った顔をするのを単に楽しんでいるだけのようだった。
美雪の態度は少し改まったものの相変わらずだったが、学力についていえば数学はボクの現役時代と同等で、それ以外はボク以上であることが夏休みを終わる頃には分かってきた。
そんな風にして二、三カ月が経ったある秋の土曜日、カップラーメンを啜りながらテレビを見ていると携帯が鳴った。
「もしもし、センセ?」
美雪からだった。
「うん」
「今日、もしかしてヒマ?」
いきなり失礼な奴だと思ったが、図星だったので素直に肯定した。
「ねぇ、お買い物に付き合って」
「いいけど、少しは接しやすい態度でボクに合わせてくれる?」
「うん、わかってる」
そう言うと、美雪は待ち合わせ場所と時間だけを告げると電話は直ぐに切れた。
美雪が指定してきたのは、人混みでごった返す待ち合わせ場所の代名詞みたいな場所だった。
“こんな人混みの中、どうやって・・・”
ボクは時計と睨めっこをしながら時間を気にして美雪の姿を探した。
間もなく待ち合わせ時刻というところまで迫ったところで、ボクの視線を遮るように目の前にすっと立ちはだかった女性がいた。
「センセ、お待たせ」
その声は間違いなく聞き覚えのある美雪だったが、風貌は一変していた。
初秋らしいフレアスカートに真っ白なブラウスを身に纏い、どこから見ても清楚で真面目な女子高校生だった。
爪は透明のマニキュアだけで顔も薄化粧のナチュラルメイクだった。
「美雪・・・ちゃん?」
「どう?見違えた?」
「・・・うん、馬子にも衣装?」
「ひっどーい!」
そう言いながらも美雪はニッコリ笑ってボクに腕組みをしてきた。
“おい、おい、ボクの腕におっぱい、当たってるんじゃないの?”
そんな心配をよそに、ボクは美雪に促されて一緒に歩き出した。
「どこへ行くの?」
「いいから、いいから」
美雪はボクの腕にしっかり掴まりながら、身体を押し付けたり引っ張ったりしながらボクを目的地へと誘導していった。
高いビルの高層階に達し、ボクたちが到着したのはプラネタリウムだった。
二人分の入場料を払わされて中に入ると、すぐに係の人が扉を閉めて、上映が始まった。
もう都会では見られない満天の星空だった。
久々に見る星空に何だか感激して、最後には流れ星まで流れていたので反射的に願い事をしてしまった。
“美雪ちゃんが大学に受かりますように”
そう心の中で唱えた自分に驚いた。
“宝くじが当たりますようにとか、美人の彼女ができますようとか、いくらでもあるだろうにどうして美雪ちゃんの・・・”
ちょっと後悔して願い事をし直そうと人口の空を見上げ続けたが、その後はどんなに目を凝らしていても、プラネタリウムの天井に流れ星は流れなかった。
ゆっくりと夜明けを迎えて場内が明るくなった時、美雪ちゃんはボクの隣の席で音も立てずに眠っていた。
“疲れているのかな?”
そう思ってもう少し眠らせてあげたかったけど、係員のお姉さんの目が”終わりましたよ”と言っていたので、美雪の肩を軽く揺すって起こした。
「あっ、寝ちゃってた?もったいなーい!」
美雪は両手を頭上に突き上げて伸びをすると、ボクの顔を見ながら目を瞬いてみせた。
「退屈だった?ボクは結構楽しんじゃったけど」
「センセ、ごめん。私、昨日寝てなかったから眠くなっちゃった」
ボクに質問を許す間を与えず、美雪はボクの腕を取って、
「センセ、パスタ食べたーい」
と言って歩き出した。
“買い物に付き合うんじゃなかったんだっけ?”
そう思いながらも、髪を染め直した美雪の誠意に免じてボクは何も言わずに美雪に従った。
「細い身体でよくそんなに食べられるね」
「うん。私、大食いコンテストの予選に出たことあるよ」
「・・・」
「ねぇ、センセ、もうひとつ注文していい?」
先週の家庭教師代が消えるな・・・と思ったが、構わなかった。
元々マンガを読んでるだけのバイトだったので文句も言えない。
“それにしても、すごく美味しそうに食うなぁ”
そう思って見ていると、何だか美雪がとても可愛らしく見えてきた。
「ごちそうさまでした!」
ボクの前で手を合わせる美雪を見ながらボクは財布の中身が少し気になったが、美雪はちっとも気にしている様子はなかった。
“金持ちの娘は、お金の心配なんかしたことないんだろうなぁ”
そう思うと、ちょっと羨ましい気もした。
「次はどうするの?」
ボクの問いに返事はなかったが、美雪に手を引かれて次に向かったのはマンガ喫茶だった。
美雪はここでもボクにお金を払わせて、二人用のボックス席を選んで入ることになった。
しばらく二人で寝そべってマンガを読んでいたが、美雪はボクの耳元に唇を寄せると小声で
「センセ、キスしよっか?」
と言ってきた。
「子供に興味はないよ」
本当は股間の膨らみがMaxに到達しようとしていたけど、軽い男に見られたくなくて、そんな返事をしてしまった。
「ふぅん、そうなんだ」
美雪はつまらなそうに再びマンガに目を戻して読み始めた。
気が付くと、美雪は身体を横にしたままボクの隣で再び眠り込んでいた。
健康でピチピチの女子高生がボクの隣で眠りこけている。
ボクはとうとう我慢できなくて、美雪の背中の方に身体を密着させると後ろから抱きしめるようにした。
クスッと笑う声がして美雪は身体を反転させると、ボクの目の前に美雪の顔が来た。
「・・・これは・・・」
言い訳をしようとしたボクの口に人差し指を当てて、出てこようとしたボクの言葉を遮ると、
「センセ、キスして」
と美雪は目を閉じながら言った。
ボクは美雪の華奢な身体を抱きしめるようにして、口づけをした。
唇を離して美雪の顔を覗き込むと、美雪は上目づかいでボクを見ながら、ひと言、
「ありがと」
と言った。
ボクがもう一度美雪を抱きしめると、美雪はボクの耳元で、
「センセ、三つ目の質問」
と言った。
ボクが身体を少し離して不思議そうな顔をすると、
「質問の権利に有効期限ってなかったよね?」
と美雪は言って見せた。
“あ、もう何ヶ月も前なのに、まだ覚えていたんだ”
そう思いながらも寝転んだまま先を促した。
「センセ、彼女、いますか?」
“うわっ、直球かよ”
そう思ったが、約束なので仕方なくゆっくり首を横に振ると、美雪は少し嬉しそうな顔をして、
「好きな人はいますか?」
と重ねて聞いてきた。ボクが再び首を横に振ると、
「セックスしたことありますか?」
と聞いてきた。
「五つ目の質問になるけど、いいの?」
ボクが聞き返すと美雪はコクリと頷いてボクに目で答えを促した。
“約束は、約束だもんな・・・”
言い辛かったけど、ボクは素直に再び首を横に振ると、美雪は何も言わずにボクの首に抱きついてきた。
「私のこと、どう思っていますか?」
美雪はボクの耳元で囁くように聞いてきた。
「・・・」
「センセ?」
ボクが答えられずにいると、美雪は腕の力を抜いてボクとの間に少し距離を取ると、ボクの顔を見ながら、
「好きなんでしょ」
とやや断定的に言った。照れ臭くなったボクは、
「あ、六つ目の質問だから答えられないなぁ」
と冗談ぽく言うと、美雪はこちらが驚くくらいの満面の笑顔で、
「センセ、セックスしよう」
と言ってきた。
「表情と言ってることにギャップがありすぎるよ」
そんな切り返ししかできなくて、ボクが少し戸惑った表情をして見せると、美雪はいつもの悪戯っぽい表情を見せて、
「これは質問じゃないよ」
と言ってボクが立ち上がるのを促した。
マンガ喫茶を出ると美雪はボクに再び腕組みをしてきて、ボクたちはそのままホテル街へと向かった。
何軒かホテルの前を通り過ぎて、どこに入るかボクが決められずにいると、美雪にグイと腕を引っ張られて壁の目隠しがついた入口を入っていった。
「センセ、どれにする?」
空き部屋の写真には電気が灯っていて、休憩と泊まりの値段が書いてあった。
ちょっと見栄を張って高い方から二番目の部屋のボタンを押すと、小窓の空いた受付で鍵を受け取る仕組みになっていた。
受付のおばちゃんらしき人の手が伸びてきて鍵を渡されると、ボクたちは腕組みをしたまま黙ってエレベーターが降りてくるのを待った。
エレベーターを待つ時間が異常に長く感じられたけど、実際は1分も待っていなかったのだと思う。
扉が開いた途端、頭の禿げあがった親父と女子高生風の女の子が出てきたので、美雪は壁の方に顔を向けるとボクの背中に隠れた。
「あたし、パスタ食べたーい」
女子高生風の女の子が親父に言っているのが聞こえてきて、ボクはどこかで聞いたセリフだと思いながら美雪の手を取るとエレベーターに乗り込んだ。
部屋に入ってからも美雪は落ち着かなかった。
「へぇ、こんな風になってるんだぁ」
枕元にあるライトをつけたり消したりして部屋の電灯が点いたり消えたりしているのを確かめるようにして遊んでいた。
ベッドの端に腰を下ろして美雪を見つめていると、不意に僕の方を振り返って美雪が訊いてきた。
「センセ、こういう所、よく来るの?」
「来るわけないよ」
「でも、来たことはあるんでしょう?」
「ないよ」
「えっ?センセも初めて?」
「彼女なんていないって、言っただろ?」
「それって、今いないってことじゃないの?ずっといないの?」
「悪かったな・・・」
高校生に痛い所を突かれて、ボクは美雪を直視できずに言った。
でも、さっきの質問のボクの答えを信じていなくてカマをかけたのかな、などとも思った。
すると美雪はいったんベッドを降りて、ボクの前に膝を着いて上目遣いでボクの顔を覗き込んだ。
「じゃ、私がなってあげる」
「えっ?」
「彼女」
ボクが呆気に取られて返事ができずにいると、美雪は立ち上がって、
「じゃ、決まりね」
そう言うとバスルームに消えていった。
シャワーの栓を捻って水が流れる音が聞こえてきた。
ボクはどうしたらいいのかよくわからなくて、とりあえず洗面所にあった歯ブラシの封を切ると歯を磨き始めた。
バスルームの扉は摺りガラスになっていて、美雪がシャワーを浴びているシルエットが見えた時、ボクのジュニアはジーンズの中で硬くなって痛みを訴えた。
バスタオルを身体に巻いて美雪がバスルームからでてくるのと入れ違いに洗面所で服を脱ごうとしたら、美雪が興味深そうにボクの方を見ていた。
「おい、見るなよ」
マジで女の子に服を脱ぐところを見られるのが恥ずかしくて、ボクは少しぶっきらぼうに言った。
すると美雪はちょっと肩を竦(すく)めてベッドルームへと移っていった。
シャワーを浴びていると屹立していたものが一旦落ち着いて、バスタオルを腰に巻いてベッドルームに戻ってみると、美雪はベッドに入って布団から頭だけを出していたが、目は閉じていた。
ボクはバスタオルを取ってベッドの上に置くと、掛け布団の端を少しめくってベッドに潜り込んだ。
美雪はバスタオルを身体に巻いたままベッドに仰向けに横たわっていた。
どうしたらいいのかよくわからなかったけど、美雪の隣に身体を横たえて、取り敢えず美雪の首の下に腕を差し込むと抱きかかえるように抱擁した。
すると、美雪の方から誘ってきたのに美雪は小刻みに震えていた。
「寒い?」
目を閉じたままの美雪が首を横に振った。
「あの・・・、美雪ちゃん、もしかして初めて?」
そう言うと、美雪は目をパッチリ開いて言った。
「センセ、ムードないよぉ」
「ごめん」
「初めてだけど、悪い?」
美雪は口を尖らすように言うと、ボクに背中を見せると拗ねて見せた。
「ごめんごめん。でも、ボクも初めてなんだ・・・」
美雪は首を捻ってボクの方に向き直ると訊いてきた。
「男の人って、エッチなところへ行くんじゃないの?」
「世間一般にはそうかもしれないけど、ボクはそういうの苦手なんだ」
美雪が問うままに、ボクはそう答えた。
すると、美雪は徐に身体全体を反転させてボクに向かい合うと言った。
「ほんと?」
「ほんと」
美雪の手がボクの頭の後ろに回ってボクは引き寄せられると、美雪は唇を重ねてきた。
唇と唇を合わせるだけのキスだったけど、石鹸の香りが美雪の身体から立ち上って、良い匂いがした。
唇が離れるとボクは美雪の身体を包んでいたバスタオルを左右に開くようにした。
美雪は腕で胸を隠すと、目を閉じたままボクに言った。
「おっぱい小さいでしょ・・・」
「そんなことないよ」
ボクはそう言いながらゆっくりと美雪の腕を胸からどけると、まだ膨らみきっていない美雪の胸を観賞させてもらった。
メイクをしている時はよくわからなかったけど、美雪は透き通るような色白で、大きくはないけど綺麗なおっぱいに綺麗なピンクの乳首が可愛らしかった。
「おっぱい小さいでしょ・・・」
美雪が再びそう言うのを聞いて、”こんなに自信満々の女の子にもコンプレックスはあるんだなぁ”と思ったりした。
美雪のおっぱいに触ってみると、とても柔らかくてお肌が滑々だった。
乳首に唇を寄せてそっと口に含んでみると、美雪は小さく声を発した。
「んっ!」
チュウチュウ吸っているうちに、乳首がだんだん硬くなってきてボクは何だか嬉しくなってきた。
おっぱいに這わせていた手をだんだん下の方に動かしていって、美雪の草むらに触れてみた。
美雪の陰毛は思ったほどゴワゴワしていなくて、むしろ柔らかい猫毛のようで、丸く膨らんだ丘を手のひらで包むように触ってみた。
美雪が両手で顔を隠すようにしたけど、身体はもう震えてはいなかった。
気がつくとボクは興奮のあまり頭に血が上ってしまって、肝心のモノはすっかり萎えてしまっていることに気がついた。
ボクが焦っていると、美雪が、
「どうしたの?」
と訊いてきた。
ボクは恥ずかしさで一杯だったけど、見られてしまったら一目瞭然なので、諦めて言った。
「興奮しすぎて・・・、ちっちゃくなっちゃった・・・」
それを聞いた美雪はクスリと笑ったのでボクはちょっと傷ついたが、どうしようもなかった。
「ねぇ、センセ。触ってみてもいい?」
美雪にそう言われて力なく頷くと、美雪はそろそろと手をボクの股間に伸ばしてきた。
細い指で真ん中あたりを摘まれた瞬間、ボクのものはピクリと動き、ぐんぐん大きくなっていった。
「すっごーい!」
目の前で男根が勃起するのを見て、美雪は目を丸くすると素直に驚いて見せた。
勢いを得たボクは、美雪に覆い被さると長い脚を割って入って挿れようとした。
でも、場所も角度もよく分からなくて、やたらめったに美雪の亀裂に擦り付けていたら、そのまま果ててしまった。
美雪の陰毛に精液がかかり、それはそれでちょっとエロかったけど、挿入もままならないまま果ててしまった情けなさのショックの方が大きかった。
ボクはティッシュをとって自分のモノを拭いた後、美雪の股間も拭おうとしたら、
「センセ、ちょっと待って」
と美雪に言われて何なのかと思ってただ見ていると、美雪はボクの精液を指に付けて匂いを少し嗅いで見ると、”ふふっ”と笑って、
「これセンセの素だね」
と言った。
ボクも釣られて笑うと美雪はバスタオルで胸を隠しながらベッドから起き上がり、空いた方の手をボクの方に伸ばして言った。
「センセ、シャワーを浴びよう」
ボクは美雪に誘われるままに美雪の手を取ると、一緒にバスルームに向かった。
美雪は泡の石鹸を手に取ると自分の局部に塗りたくって洗い流した後で、ボクのモノにもソープをまぶした。
「洗ってあげるね」
そう言われて美雪に任せていると、ボクは美雪の手の平の中で再び大きくなってしまった。
「元気でちゅねーw」
それを見た美雪は恥ずかしさを隠すかのようにボクのモノに向かってそう語りかけた。
お互いの身体を拭きあって再びベッドに戻ると、ボクは一からやり直した。
少し冷静さを取り戻して、ベッドに横になる前にコンドームを探すとこっそり枕の下に忍ばせた。
抱き合ってキスをして、小さな乳房を揉んでからもう片方のおっぱいに口を近づけると乳首を吸った。
「んんっ・・・」
美雪の口から小さな喘ぎ声が漏れたところでコンドームを登場させ、ボクは美雪に膝を立てさせると再び入り口を探した。
いくらコツコツとペニスの先で探ってみてもわからずにいると、美雪がそっと手を伸ばしてくるとボクの竿をガイドするように導いてくれた。
「このままゆっくりきて」
ボクが少し驚いた顔をして見せると、
「女の子はね、タンポン使っているから」
と言い訳するように言った。
美雪のガイドに従って、それとコンドームのゼリーが潤滑油になって、四分の一ぐらい入ったところで美雪が眉間に皺を寄せた。
「痛いの?」
思わず心配になって尋ねると、美雪は首を振りながらボクにしがみ付いてきた。
その勢いでボクは根元まで美雪に中に入ってしまった。
美雪の中は温かくて脳がとろけそうだった。
腰を動かそうとすると、背中に回った美雪の腕に力が入ったので、きっと痛みに耐えているのだと思った。
ボクは美雪を痛がらせないようにできるだけ動かないようにしていたのだけど、繋がったままキスをしたら猛烈に興奮してしまい、思いっきり腰を振って美雪の中で果ててしまった。
腕を突っ張って起き上がろうとすると、美雪の声がした。
「待って」
ボクが動きを止めると、
「センセ、ティッシュを二、三枚取って」
と言うので渡してやると、
「そっと、そっとね」
と言いながらボクのモノが抜け出ると素早く自分の股間に丸めたティッシュを押し当てた。
ボクがコンドームを外して後始末をしていると、ティッシュに薄らと血が滲んでいた。
結局ボクたちはまたシャワーを浴びて、ベッドに横になると猛烈な睡魔が襲ってきた。
どれだけ眠ったのかわからなかったが、目を覚ますと美雪の顔が目の前にあった。
美雪の大きな瞳がボクをずっと見つめていた。
「あっ、寝ちゃった?」
「うん、今日のセンセの顔を覚えておきたくてずっと見ていたの」
「痛かったろ。我慢できなくて、ゴメン」
「ううん、素敵だったよ。こんな素敵なロストバージンって、そうそうないんじゃないかな」
美雪が言うほど素敵だったとは、初めてのボクでも到底そうは思えなかった。
でも、美雪の優しさには感謝していた。
ホテルを出ると小雨が降っていた。
「折り畳み傘、持ってるんだけど、私、傘を濡らすの好きじゃないんだ。センセ、走ろう」
そう言うと美雪は駅に向かってボクの前を走り出した。
小鹿のようにダッシュをする美雪のあとを追いながら、美雪が少し蟹股気味になっているのを見てボクは思わず笑ってしまった。
年下らしく子供っぽいところと、年下なのに大人っぽいところがあって、高校生というのは微妙で面白い存在だと思った。
駅に着いた時、美雪は肩で息をしていたが疲れた様子はなかった。
ハンカチを取り出して、美雪の顔を拭いてやると、
「センセ、ありがと」
と言いながら、美雪もハンカチを取り出してボクの顔を拭いた。
「ボクたち、お互いに何をやってるんだろう・・・」
笑いながらそう言うと、美雪も笑いだして言った。
「そうだね、でも、センセの顔をもう少し触っていたいの」
美雪は少し背伸びをしてボクの顔を引き寄せると唇にチュッとキスをした。
「センセ、またね。バイバイ」
小さく胸の前で小さく手を振ると美雪は駅の改札に向かっていった。
美雪の胸が反り返って腰が少しずつ上がってきてきた時、ボクは美雪の手首を掴んで、オナニーを止めさせた。
美雪の腰がストンと布団に落ちて、美雪は切なげな眼差しをボクに向けると、理性のタガが外れたようにボクに訴えた。
「センセ、もう、イキたいの。お願い、もうイカせて!」
ボクは黙って美雪の身体を反転させて布団にうつ伏せにさせてから、両手で美雪の腰の辺りを引き上げて腰を高く上げさせた。
美雪の股間の亀裂はパックリとボクの目の前で開き、中から溢れ出た愛液が内股を伝って膝の方に流れていた。
ボクは屹立した肉棒をその亀裂に押し当てると、一気に美雪を後ろから貫いた。
「ひぃーっ!!!」
美雪は歓喜の悶え声を上げたかと思うと背中が反った。
ボクは美雪の腰を抱えながら思いっきり腰を打ち付けた。
「センセ、気持ちいい!あーっ、気持ちいい!あ、あ、あ、あ、あ、あー、もうイッちゃう!あー、、もう、もう、あ、あ、あー、イク、イク、イク、イク、イクぅーっ!!!」
あれほど声を上げることを気にしていた美雪だったが、迎えた凄まじい絶頂感に堪え切れず、大声を上げながら昇天すると、顔を枕に突っ伏した。
美雪の肩も背中もいつまでも痙攣が止まらなくて、膣の中もギュウギュウ収縮していて、呑み込んだままのボクのペニスを締め付けた。
ボクもフィニッシュを迎えたくて、再び激しいピストンを再開すると美雪が慌てたように言った。
「センセ・・・、続けては・・・ダメ。私、もう正気で居られなくなっちゃう・・・、あ、ダメだってば・・・、ダメ・・・、あー、また来る、あー、あー、あー、イクっ、あー、イクっ、もうダメ、あー、イク、イク、イク、イク、イクーっ!!!」
美雪は枕を掻き抱くような格好でエクスタシーを迎えると、気を失い、枕カバーに美雪の涎が広がった。
同時に美雪の中の激しい収縮に締め付けられて、ボクはドピュッっと音がしたのではないかと思うほど大量の精子を放出すると、美雪の背中の上にドサッと覆い被さった。
翌日、大家さんと部屋の前で鉢合わせをすると苦々しい顔をして言われてしまった。
「お若いからお盛んなのはわかるけど、もう少し静かにしてもらえるかな」
今は妻になった美雪にその時のことを話すといつも顔を赤らめるのだが、何だか嬉しそうな顔もする。
その話は、ボクたち夫婦の夜の営みの合図のようになっていて、ボクたちはいつまでもあの頃の気持ちを忘れずに愛し合っている。
抜ける!
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